広島高等裁判所 昭和43年(ネ)343号 判決
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〔判決理由〕ところで被控訴人は、控訴人が自動車損害賠償保障法第三条にいう自己のために自動車を連行の用に供する者にあたると主張するので、この点について検討する。
<証拠>によれば、控訴人と呂連弘は、近所に住んでいて、互いに顔見りではあるが、余り話をしたことのない仲であること、本件事故当日、控訴人はちようど仕事が休みで、家にいても寂しい気持から、友だちの金光和夫を尋ねて、広島市舟入本町朝日会館へ出かけたが、そこには駐車場がないので、附近の舟入ホール前の自転車置場に本件軽自動二輪車を駐車させたこと、控訴人は金光がいたら直ぐにどこかへ出かける考えで、出かけ易いように、車にキーをつけたままにして置いて、朝日会館へ入つて金光を探し廻つていたこと、呂連弘は、控訴人が舟入ホール前に車を置いて朝日会館へ入つたのを見ていて、控訴人が用をすませて出て来るまでの間なら控訴人にも許して貫えそうな気持で、控訴人の知らぬ間に、無断で本件軽自動二輪車を乗り出して運転中、十分とたたない頃に本件事故を起したこと、本件事故の直後、呂連弘は、朝日会館にいる控訴人に電話で事故を起したことを伝え、車を無断で運転したことを詑びたこと、控訴人は、呂連弘の電話で始めて同人が本件軽自動二輪車を無断で運転し、事故を起したことを知つたこと、呂連弘は、警察で取調べを受けた際、無断で運転したとなると窃盗で処罰されるかも知れないと思い、控訴人から借りて運転したように述べたことが認められる。<証拠判断略>
右の事実によれば、控訴人は、本件軽自動二輪車の所有者であるが、何等特別の関係のない他人である呂連弘によつて右自動車を無断で運転されたのであるから、本件事故当時、右自動車を自己のため運行の用に供していた者と認める余地はないものといわなければならない。もつとも、前記のとおり、控訴人は、右自動車にキーをつけたまま駐車させていたわけであるが、その一事をもつて、控訴人に対していわゆる運行供用者責任を問うことはできないものと解すべきである。以上と異なる被控訴人の主張は採用し得ない。(辻川利正 浜田治 村岡二郎)